会長挨拶

第30回日本産婦人科乳腺医学会 開催にあたり

第30回日本産婦人科乳腺医学会
会長関根 憲
関根ウィメンズクリニック

この度、第30回の学術集会を開催させて頂くこととなりました。

第30回という記念すべき大会を主宰する機会を与えて頂き、光栄に思いますと同時に、苛原理事長をはじめ、多くの先生方に心より感謝申し上げます。

期日は2024年2月25日の日曜日で、会場は新宿の京王プラザホテルです。

今回の学会のテーマとして、女性医学の観点から、「女性の健やかな未来を求めて」とさせていただきました。

日本人女性において最も罹患率の高い悪性疾患は乳癌であり、毎年9万人以上の方が罹患し、1万人以上の方が亡くなっています。その罹患数は今なお増加傾向にあり、過剰診断が問題にもなってはいますが、早期発見、早期治療が重要であることは間違いないことと思われます。患者さんに対しては、乳房を意識する生活習慣を心掛けるように、いわゆるブレストアウェアネスの普及に努め、そして適切な診断をすることが、早期発見につながり、同時に乳腺専門医との連携を図っていくことで良い医療を展開することが可能となります。

そうした連携をスムーズにするには、女性を日頃診る機会が多く、女性の一生を診ていく我々産婦人科医の役割は、とても大きいと考えています。

乳癌の診断においては、トモシンセシスや造影マンモグラフィなどの様々なモダリティも出てきて、選択肢も多様化していますし、また、乳癌の治療においては、個々の癌のホルモン受容体とHER2の発現状況に応じて、内分泌療法、化学療法、抗HER2療法が行われていますが、最近の分子標的薬を含む薬物療法の進歩はめざましく、新たな薬剤も多く登場し、目まぐるしく変化しています。さらに、多くの病気が遺伝子の変化によることが解明されてきています。限定的ではありますが、がんゲノム医療では、主にがんの組織検体を使って多数(100~500種類)の遺伝子の変化を「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムファイリング検査)」によって解析し、がんの発生や浸潤・転移などに関与したドライバー遺伝子を明らかにし、それを標的とした治療を行うことができるようになってきています。

また、二次的所見として生殖細胞系列バリアントの情報が得られることもあり、その後の自らの健康管理、医学的管理、ご家族に結果をお伝えするかどうかなどを含めた、今後の方針に関する遺伝カウンセリングも重要になってきています。遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)でも、その1/4はBRCA1、BRCA2以外の遺伝子が関わっていることがわかっており、そのため多数の遺伝子を一度に解析するマルチ遺伝子パネル検査(MGP)も行われるようになってきています。

このように、乳腺疾患を取り巻く環境は、以前にも増してさらに複雑化しています。

そこで、今回の学会では、診断や乳癌術後のヘルスケアなど、産婦人科がどのように乳腺疾患と関わっていけばよいか、知識の共有をはかりながら、明日からの診療に役に立つものとなるようにしたいと思っています。また、看護師や助産師、臨床検査技師、放射線技師などのメディカルスタッフの方々にも学びの場となればと考えています。

リアル開催ならではの臨場感と会員同士の相互交流も大事にしながら、便利なWEBも取り入れて、オンデマンド配信も予定しています。 多くの皆様の、ご参加をお待ちしております。