団体代表者挨拶
- 日本女性栄養・代謝学会
- 理事長 宮坂 尚幸
この度、日本女性・栄養代謝学会の第3代理事長を拝命いたしましたので、一言ご挨拶申し上げます。本会は日本産科婦人科学会栄養問題委員会の有志が中心になり、産婦人科領域における栄養と代謝を探求する研究会として、約半世紀前に創設された歴史と伝統がある学術団体です。さらに2018年には、学術活動の更なる活性化と経営の安定化を目指して一般社団法人日本女性栄養・代謝学会となりました。
本法人の設立に多大なご尽力を賜りました佐川典正初代理事長、それを引き継ぎ本学会の活性化に優れた手腕を発揮された杉山隆第2代理事長に敬意を表したいと思います。
本会の目的とするところは、「女性の健康ならびに次世代を担う胎児や小児の健康増進に寄与し、もってわが国における学術の発展と国民の福祉と健康に寄与すること」と定款に定められております。栄養・食生活は、生命を維持し、子どもたちが健やかに成長し、また人々が健康で幸福な生活を送るために欠くことのできない営みであり、食と健康には切り離すことのできない密接な関係があることは言うまでもありません。実際わが国において、第二次世界大戦以降に感染症や脳出血による死亡が減少した背景には、医学や薬物療法の発達以上に、電気冷蔵庫の普及により、それまでの高塩分・高炭水化物・低動物性たんぱく質という旧来の食事パターンから、動物性たんぱく質や脂質の増加など、食事内容が変化を遂げたことが大きく貢献しているといわれています。その一方で、現在は非感染性疾患、いわゆる生活習慣病の増加が深刻な問題となってきており、ここには自身の栄養・食生活のみならず、妊娠中の女性、あるいは妊娠前の女性の栄養・食生活によってもたらされた、次世代への影響も看過することができない課題となっております。
超高齢社会を迎えたわが国において、食と栄養の問題に改めて真剣に取り組むことは必須であり、その課題の解決に向けて本学会は重要な使命を帯びていると思います。栄養と食生活の課題は、単に現象を観察し理論構築するだけでなく、実践し社会実装しなければ解決したことにはなりません。栄養学の理論をどれだけ唱えられても、妊娠中の母体の栄養の重要性をどれだけ解説できても、「では一体、どの時間帯に何をどれだけ食べればよいのか」を説明できない限り、効果は限定的と言わざるを得ません。そのためには医師や看護職のみならず、薬剤師、栄養士、社会医学や基礎医学の研究者が一堂に会して情報交換を行い、理論を実践に結び付けてゆく努力をする必要があると考えます。
杉山前理事長のご卓見により、本学会は多職種連携による学会運営を目指してまいりました。私もその方針を継承し、より多くの皆様のお力添えを賜りながら、「売り家と唐様で書く三代目」とならないように学会を運営して参りたいと考えております。何卒よろしくお願い申し上げます。