会長挨拶

この度、2018年6月29日(金)・30日(土)に、第31回日本小切開・鏡視外科学会を、広島国際会議場(広島県広島市)において開催致すことになり大変光栄に存じます。1999年、第9回「吊り上げ法手術研究会」が広島県尾道市で開催されて以来19年ぶりの広島県での開催となります。本学会は、2009年5月に「吊り上げ法手術研究会」と「ミニラパ研究会」が統合する形でNPO法人として設立された学術団体であります。設立の目的は、開腹手術で確立された安全な手技を損なわない小切開と内視鏡外科手術の確立と普及であります。そこで今回のテーマを「内視鏡外科の進歩と調和」としました。 内視鏡外科手術で使用するために開発されたエネルギーデバイス、自動縫合器は、開腹手術に応用され、出血量を減らし、簡便で確実な吻合を可能としました。さらに内視鏡外科手術はロボット手術へと発展しロボット手術は指の動きの限界を超えました。

内視鏡画像についてもFull-high vision(2K)映像から4K,8Kへの画像の向上に加え蛍光観察内視鏡システムは肉眼の限界を超えて手術をサポートしています。今後ますます科学技術の進歩(progress)に伴って、更なる手術手技の向上が期待されます。しかしながら、内視鏡外科の進歩にも拘らず、手術に伴う合併症は極端に減少した訳ではなく、内視鏡外科やロボット手術が故の新たな合併症も出現しています。そしてヒューマンエラーはある確率で起きてきます。それを減らすためには、外科系医師が注意するには限界があり、手術室においては麻酔科医、看護師、臨床工学士、薬剤科などの医療スタッフが役割分担し安全性を確保する必要があります。また周術期管理においては共通の認識で栄養科、リハビリテーション科などの多職種のサポートが不可欠です。

さて、調和(harmony)とは「複数の事象が程よく混じり合い衝突なくまとまっていること」を意味します。手術手技においては、従来の手術に小切開、HALS,内視鏡外科手術、送気、気腹、吊り上げ法をたくみに使い分け、あるいは組み合わせて疾患病態により、調和のとれた手術が望まれます。そして周術期に関る医療スタッフが調和のとれたチームとして患者中心の安全で確実な医療を行うことが求められています。

幸いにも、こうしたコンセプトは外科領域(消化器・呼吸器・内分泌・小児外科など)のみならず、産婦人科や泌尿器科等にも広く理解が進んでいると感じております。

今回の発表では、医師のみならず医療スタッフの参加を募り、医療現場の現状と問題点を追求し、各施設におけるチーム医療の構築(Team Building)と周術期管理(Perioperative Management)についての討論も考えております。皆様におかれましては広島国際会議場の横に位置する平和公園、平和資料館の訪問も兼ねて手術室看護師、臨床工学士、若手外科医の方々を連れ立って平和都市、広島に足をお運び頂きたく心よりお願い申し上げます。

第31回日本小切開・鏡視外科学会
会長 漆原 貴
(県立広島病院消化器乳腺移植外科:内視鏡外科グループ主任部長
 広島大学医学部臨床教授)